相続放棄のメリット・デメリット
■相続放棄とは
被相続人が亡くなると、その被相続人に帰属している財産は、直ちに相続人に帰属します(民法896条)。ただ、これでは、相続人は相続財産を強制的に相続させられることになってしまいます。そこで、相続人には、相続財産を受け取るかどうかを選択する自由が保障されています。これが相続放棄の制度です。
相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に相続を放棄するかどうかを選択しなければなりません(915条1項本文)。相続の放棄をしようと決めたら、そのことを家庭裁判所に申述する必要があります(938条)
■相続放棄のメリット
・マイナス財産の相続を防ぐことができる
相続によって取得する財産は、被相続人の財産に属した「一切の権利義務」です(896条)。これを簡単に言い換えると、被相続人が負っていた借金すらも相続して、自分が負うことになってしまうということになります。このようなマイナス財産が、プラス財産を上回る場合には、相続放棄をすることで、マイナス財産が残ることを防ぐことができます。
・相続に関する一切の紛争から距離を置ける
相続には、争いごとがつきものです。金銭問題であることはもちろん、感情的になり、それが争いに発展する相続人の方もおられます。相続放棄をすることで、そういった財産をめぐる争いから距離を置くことができます。
・相続税の申告が必要ない
相続放棄をすると、「初めから相続人とならなかった」とみなされます(939条)。そうすると、当然のことながら、相続税の申告は必要なくなります。
また、①相続又は②遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に、被相続人から贈与を受けていた場合に、その価額を相続税の風価額に加えなければならない旨の規定があります(相続税法19条1項)。しかし、②遺贈がない場合には、①相続を放棄してしまえば、同項の規定の適用はなくなるので、贈与を受けたとしても原則的には贈与税の申告納付をするだけでよいことになります。
■相続放棄のデメリット
・プラス財産も相続できない
相続放棄によってマイナス財産の相続を防ぐことができる反面、プラス財産も相続できなくなってしまいます。被相続人に関する思い入れのある土地建物等についても相続する機会を失ってしまいます。
・一度放棄すると撤回できない
相続放棄は、撤回が許されていません(919条1項)。一定の場合には、取り消すことも可能(2項)ですが、取り消すことのできる期間に制限があります(3項)。
・非課税枠が利用できなくなる
「相続人」が、生命保険金や退職手当等を受け取った場合には、相続により取得したものとみなされます(相続税法3条)。そのため、これらには相続税が課されます。この場合に、法定相続人1人当たり500万円までは非課税となります(同法12条1項5、6号)。しかし、相続を放棄すると、「初めから相続人とならなかった」とみなされ、相続税法3条の適用はなく、12条の適用もありません。したがって、単に遺贈によって取得したことになり、非課税枠を利用することができなくなります。
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